クリエイターとして知っておきたい人間の主な知覚・心理特性

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人が使うモノ・サービスを作るにあたり、「何が良くて何が悪いか」を判断する基準を持つことは大切です。それを個人の視点・好みで判断してしまうと、本当にターゲットユーザーに対して受けいられるものができたかどうかわかりません。

そこで、「人間の知覚・認知特性」を基準にそれを反芻することで、よりユーザーにマッチする成果物が作れるようになると考え、主な知覚・認知特性の概要をざっくりと記述しました。

【目次】
[1]知覚特性
(1)視覚の特徴
(2)知覚の落とし穴
(3)錯視
(4)視覚的ストレス
(5)色覚の個人差と色の効果
まとめ
[2]心理特性
(1)心理的リアクタンス
(2)現状維持バイアス
(3)メタ認知の楽観性
(4)損失回避
まとめ


[1]知覚特性

(1)視覚の特徴

人間の視覚的な特徴として、視点の中心ははっきりと見えていますが、周辺部分はぼやけて見えています。普段は、無意識に素早く眼球を動かすことで、視野全体がはっきり見えているように感じています。

(2)知覚の落とし穴

人間はまず、視野全体を「見る」ことで大まかな全体像を把握します。
そして、次の段階の「観る(観察する)」ことで、個々の対象に注意を払いながら、詳細について確認しています。
「間違い探し」などで、違う箇所を見ているにも関わらず、気づかなかったのは、こういった「見ている」のに「観ていない」状態になっているため、違和感を見落としてしまうからです。

(3)錯視

チェッカーシャドウ錯視

物理的に同じ色でも、円柱の影になっていないAタイルは、より黒く見えます。また円柱の影になっているBタイルは、より白く見えます。


https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Checkershadow_double_med.jpg

ポッゲンドルフ錯視

物理的に真っ直ぐな直線でも、途中で遮られてしまうと、真っ直ぐではなくずれて見えます。


https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Poggendorff_illusion.svg

ミュラー・リヤー錯視

物理的に同じ線の長さでも、両端に矢印を描くと、線画が短く見えたり、長く見えたりすます。


https://commons.wikimedia.org/wiki/File:M%C3%BCller-Lyer_illusion.svg

その他、多く錯視は発生します。

(4)視覚的ストレス

特定の周波数に対して、脳の視覚系活動が最も活発になるため、視覚的ストレスになる可能性があります。
視覚的ストレスは、健康被害をもたらす危険性を孕んでおり、子どもの方が脳の発達段階にあるため、大人よりも視覚的ストレスに敏感になります。

ストライプパターン(縞模様刺激)

ストライプのパターンによって明暗の光度差から生まれるストレスで、粗いストライプ・パターンより、細かなストライプ・パターンの方が視覚的なストレスが大きくなります。

フリッカー(点滅光刺激)

フラッシュの点滅など、強い光の点滅の光源差から生まれるストレスです。1997年に放送された「ポケットモンスター」での激しい光の点滅が、視聴者に与えた健康被害が例としてあげられます。

(5)色覚の個人差と色の効果

色覚障がい者だけでなく、色覚正常者でも、色の見え方にも個人差があります。これは、可視光線のスペクトルは色の境界線が曖昧なため、波長を認識する視細胞の個人差によるものではないでしょうか。
また、色の種類、面積によって人間が受ける印象が異なっています。明るい色は面積が大きくなると、より明るく鮮やかに見えるようになります。壁紙のサンプルなどは面積が小さいため、実際の印象と大きく変わるので特に注意が必要です。
主に、色には以下のような効果があります。

暖色:進出色
寒色:後退色
高い明度:進出色で重量が軽く感じる
低い明度:後退色で重量が重く感じる

[まとめ:知覚特性に対し、配慮すること]

・重要な情報は見落とされないように、他と形状や色、サイズを変えるなど工夫する
・人間の視覚的にバランスが良くなるよう、目視でサイズを調整する
・視覚的ストレスを与えないような配色、模様を計算する
・色の効果を理解し、目的にあった適切な配色を選ぶ


[2]心理特性

(1)心理的リアクタンス

人間は、自分の意思で行動・判断したいという欲求を持っており、何かを強制されると、それに対して反発したくなる気持ちが生まれます。

(2)現状維持バイアス

人間は、変化や未知なものに不安や恐怖を感じるため、現状をそのまま保持したい心理が働きます。これは遺伝子レベルで考えると、エネルギー効率の問題にもなり得ます。
現状を変えるには大きなエネルギーが必要であり、生物の生存本能としてはできるだけエネルギー効率を高める(エネルギーを使わない)ことが、生存競争に勝つ方法だからです。

(3)メタ認知の楽観性

自分の行為に関しては、行為をする理由や要因、状況を知っているために、正当化しやすくなります。
反対に、他者の行為に関しては、その理由や要因、状況を知らないことが多いため、行為を客観的に見て厳しい判断をしがちになります。

(4)損失回避

人間は、利益の喜びより、損失の苦痛の方が大きいため、得をするよりも損をすることを無意識に避けようとする傾向があります。

[まとめ:心理特性に対し、配慮すること]

・人間の気持ちを理解するために、対象を観察したり、洞察力を高め、想像力を働かせる
・何かを強制するのではなく、自らの意思で自然と行動できるようにそっと後押しするようなユーザーインターフェイスや、導線を検討していく
・心配や不安、損失への恐怖をやわらげるサポート体制や、機能を用意する


自分にも当てはまることですが、無意識的な行動が実は、人間本来が持っている特性であることが多いのです。それは、人間が生き抜くために獲得してきた機能であり、それによって今まで恩恵を受けてきた証でもあります。

ただ、人間が他の生物と異なるものは「考える」ことができるということで、逆にいえば「考える」ことがヒトを人間たらしめることだと思います。
なんとなく、「自分が良いと思うから」で制作するのではなく、「なぜ良いと思ったのか」「その基準は他者にも当てはまるのか」を考察、言語化し、仲間と共有することでモノづくりのブラッシュアップを目指したいと考えています。

自分自身のことなのに、知らないことが多く新鮮な気持ちですが、調べていくと人間そのものに興味を持ち始めてくるので、様々な視点から人間というものを観察していき、アイデアや制作に活かしていきたいですね。

[参考にした本]
よくわかるデザイン心理学
ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考