「ドリー・パン・トラッキング」で映像が変わる――AI動画生成のためのカメラワーク×尺×アスペクト比プロンプト実践講座

動画生成プロンプト のアイキャッチ

AI動画生成は「何を映すか」だけでなく「カメラがどう動くか」を書き込むかどうかで仕上がりが大きく変わる。今日はKling・Veo・Runway・Hailuoなどで共通して効くカメラワークの語彙と、尺・アスペクト比の決め方をオリジナル作例つきで整理する。

AI動画生成のカメラワークとプロンプトのイメージイラスト

なぜ「カメラ語彙」を書くと映像が変わるのか

Veo・Kling・Seedanceなど主要モデルは大量の実写映像で学習されているため、”dolly”(ドリー)や”pan”(パン)、”tracking shot”(トラッキングショット)といったカメラマン同士が使う専門用語をすでに理解している。逆に「かっこよく動かして」「ダイナミックに」のような曖昧な指示では、モデルは意図を推測するしかなく、目的のない浮遊感のある動きになりやすい。Runwayの公式Gen-4プロンプトガイドも、否定形(「カメラを動かさないで」)ではなく肯定形(「カメラは静止したまま」)で書くことを推奨しており、これは他モデルでも概ね共通する原則だ。

覚えておきたいカメラワーク語彙

用語 動き 効果・向いている用途
Dolly in / out(ドリーイン・アウト) 被写体に向かって前進/後退 感情の高まりや緊張感を強調。顔のクローズアップに寄せる演出
Pan left / right(パン) カメラ位置は固定のまま首振りで左右に回転 広い空間や横並びの被写体を順に見せる
Tilt up / down(ティルト) 固定位置のまま上下に回転 建物の高さや人物の全身を見上げ・見下ろしで見せる
Tracking shot(トラッキング) 被写体と並走・追従して移動 歩く・走るなど「旅」や移動の物語性を出す
Crane up / down(クレーン) カメラが上下に大きく昇降 スケール感を出す、俯瞰へのつなぎ
Orbit(オービット) 被写体の周りを円弧状に周回 プロダクトショットや360度で魅力を見せたい場合
Whip pan(ホイップパン) 高速で首振りし像がブレる カット代わりの勢いのある転換
Handheld(ハンドヘルド) 手持ち特有の微振動を伴う ドキュメンタリー的なリアリティ、生々しさ
Locked / static(固定) カメラは一切動かない 会話シーンなど被写体の芝居に集中させたいとき

これらの用語はRunway Academyのプロンプトガイドでも解説されている通り、1カットにつき動きは1つ、多くても2つまでに絞るのが安定のコツ。ズーム・パン・チルトを同時に詰め込むと、モデルが動きの整合性を取れず背景が歪むことがある。

作例1:商品を魅力的に見せる「オービットショット」

①狙い:陶器のマグカップを360度でぐるりと見せ、質感と艶を伝える製品ショート動画。

A handcrafted ceramic mug with a matte indigo glaze sits on a pale oak table, morning light from the left creating a soft highlight on the rim. Slow 180-degree orbit around the mug at eye level, camera smoothly circling from front to side. Steam rises gently from the coffee inside. Shallow depth of field, soft focus background. 8 seconds, 1:1, no on-screen text.

③解説:“slow 180-degree orbit”と回転量を具体的な角度で指定すると、モデルが移動距離を掴みやすくカメラが暴走しにくい。”at eye level”で高さを固定し、”shallow depth of field”で背景をぼかすことで主役の質感に視線を集める。尺とアスペクト比を末尾に明記するのは、SNS投稿にそのまま使える形で出力させるための実務的な一手。

作例2:人物の物語性を出す「トラッキング×ドリー」

①狙い:夕暮れの商店街を歩く人物を追いかけ、目的地への「旅」を感じさせるカット。

Subject: a young woman in a beige trench coat walks alone down a narrow shotengai alley at dusk, paper lanterns glowing overhead. Subject movement: she walks at a steady pace, glancing briefly at a shop window. Camera: tracking shot following from the side at waist height, slow dolly-in as she reaches the end of the alley. Lighting: warm tungsten lantern light mixed with cool blue dusk sky. Atmosphere: light steam rising from a nearby food stall. 10 seconds, 16:9.

③解説:これはKlingの公式ブログが紹介する「Subject+Subject Movement+Scene+Camera Language+Lighting+Atmosphere」という定型に沿った構成。要素を順番に並べるだけで、被写体の動きとカメラの動きが混線しにくくなる。”tracking shot following from the side”と”slow dolly-in”を組み合わせているが、これは”時間経過で動きが変化する”複合指示であり、単一動作の原則の例外として意図的に使っている。

作例3:スケール感を出す「クレーン→プッシュイン」

①狙い:山間の一軒家を遠景から徐々に寄っていき、暮らしの温かみへとつなぐブランド動画のオープニング。

Wide establishing shot of a small wooden cabin nestled in a misty pine valley at golden hour. Camera starts high on a crane, slowly descending and pushing in toward the cabin's lit window. Warm amber light glows from inside; soft mist drifts across the frame. Cinematic film look, 35mm lens, gentle film grain. 8 seconds, 21:9.

③解説:“crane”で俯瞰の縮尺感を作り、”pushing in”で被写体への感情的接近を重ねている。GoogleのVeo 3.1プロンプトガイドが薦めるように、レンズの焦点距離(35mm)やフィルムグレインなど撮影機材の語彙を足すと、CG的な質感から離れて実写らしい説得力が増す。21:9のようなシネマスコープ比はブランドムービーのオープニングに合わせて選んでいる。

作例4:ドキュメンタリー的な生々しさを出す「ハンドヘルド」

①狙い:屋台の厨房で料理人が手際よく調理する様子を、作り込み過ぎない自然な質感で見せるカット。

A street food vendor's hands chop scallions rapidly on a worn wooden board, steam rising from a hot wok beside them. Handheld camera with subtle natural shake, close-up at a slight low angle. Locked focus on the hands throughout. Warm tungsten stall lighting, slight motion blur on fast movements. Documentary style, unpolished authentic look. 6 seconds, 9:16.

③解説:“handheld”に加えて”subtle natural shake”と強度を添えることで、揺れすぎて見づらくなる失敗を避けている。Runway Gen-4ガイドが指摘する通り「カメラを動かさないで」ではなく”locked focus”のように肯定形で書くのがポイント。縦型の9:16はショート動画プラットフォーム向けの選択。

作例5:Kling 3.0の「マルチショット尺指定」で短い物語を作る

①狙い:1本の動画の中でカットを割り、山を登るクライマーの一連の物語を15秒にまとめる。

Shot 1, 5s: Wide tracking shot of a lone climber ascending a snow-dusted ridge at sunrise, orange light raking across the rock face. Shot 2, 5s: Close-up of gloved hands gripping a narrow ledge, breath visible in the cold air. Shot 3, 5s: Aerial pull-back revealing the climber small against the vast mountain range, triumphant pause at the summit. Consistent character: same red jacket and backpack throughout. 16:9.

③解説:Kling 3.0の尺・ナラティブガイドが紹介する「Shot 1, ○秒:… Shot 2, ○秒:…」という時間指定つきの箇条書き構造を使うと、単発カットでは難しい起承転結を1生成でまとめやすい。各ショットの合計が動画全体の尺と一致するよう秒数を明記し、”consistent character”のような一貫性の指示を添えて衣装が途中で変わらないようにしている。

モデル別・尺とアスペクト比の目安

モデル 主な尺 アスペクト比 備考
Runway Gen-4 5秒 / 10秒 横・縦・スクエア対応 1生成=1シーンとして設計。複数展開を1プロンプトに詰め込みすぎない
Veo 3.1 数秒〜最大120秒 16:9 / 9:16 音声・台詞同時生成に対応。カメラ制御の表現力も強化
Kling 3.0 最大15秒 16:9ほか複数 マルチショット尺指定のナラティブ構成が可能
Sora 2 〜25秒程度 用途に応じ選択 1カット1動作・1カメラワークが基本方針
Seedance 2.0 4〜6秒/8〜10秒/12〜15秒 用途に応じ選択 短尺はSNSフック、長尺はストーリーテリング向けと使い分け

数値は各社の発表・ガイドに基づく目安で、プランや更新により変動する。生成前に必ず公式ドキュメントで最新の仕様を確認したい。

まとめ:カメラワードは「動詞」として先頭に置く

  • カメラ用語は文の後半に添えるより、モデルが重視しやすいプロンプトの前半に置くと反映されやすい。
  • 1カットの動き(カメラ・被写体とも)は基本1つ、多くても2つまで。欲張ると背景が歪んだり物理がおかしくなりやすい。
  • 「動かさないで」ではなく「固定されている」のように肯定形で書く。
  • 尺とアスペクト比は最後に明記し、投稿先のプラットフォームに合わせて先に決めておく。

主な情報源

サンプルプロンプトは本メディアのオリジナル例です。各モデル・サービスは提供元の規約に従ってご利用ください。生成物の権利・商用条件は各規約をご確認ください。情報は公開時点のもの。収集・要約はAI、公開判断は人。