静止画1枚を「一貫させる」のと、動画で複数ショットにわたって「一貫させ続ける」のは難易度が違います。カメラが動き、表情が変わり、尺が伸びるほど、AIはキャラの顔や衣装、世界観のトーンを少しずつ描き替えてしまいます。今日は画像生成側の被写体固定ではなく、動画生成側で使う参照画像・エレメント・スタイル継承・シード値という4つの武器を、それぞれ狙いの違うオリジナル作例プロンプトで解説します。

動画生成で「一貫性」が壊れる理由
動画生成モデルは1フレームごとに絵を再計算しているわけではありませんが、内部的には時間方向にも「もっともらしさ」を保とうとするだけで、被写体の同一性そのものを保証する仕組みではありません。カメラが切り替わる、照明が変わる、表情が大きく動く——こうした変化が同時に起きるほど、顔立ちや衣装のディテールがドリフト(drift)していきます。これに対して各社が用意しているのが、テキストだけに頼らない「参照アセット」の仕組みです。Runway Gen-4は参照画像から被写体・場所の潜在表現を保持し続けるアプローチを採用しており、Klingは「Element」という形で顔や衣装を個別にバインドできます。まずはテキストプロンプトを工夫する前に、どの参照方式を選ぶかを決めるのが近道です。
| ツール | 参照の仕組み | 得意な用途 |
|---|---|---|
| Runway Gen-4 / Gen-4.5 | 参照画像(最大3枚)+ image_1/2/3ラベル指定 | 複数ショットでの顔・衣装の同一性 |
| Kling 3.0(Elements) | 顔・衣装・背景を個別にバインドするElement Library | アングルが変わっても崩れないキャラ固定 |
| Sora 2 | Cameo(一度撮影した実写素材から人物を再利用) | 実在人物ベースの登場シーン |
| Veo 3.1 | 参照画像(asset/style image)+ seedパラメータ | 世界観トーンの継承と再現性の確保 |
| Seedance 2.0(Reference-to-Video) | キャラ・スタイルを分離して渡すマルチ参照 | シリーズものの色調・雰囲気の継承 |
| Hailuo(MiniMax H3 / S2V系) | 被写体参照1枚から表情・姿勢を維持 | 単一人物の短尺クリップ量産 |
作例① 会話シーンでキャラの顔と衣装を固定する(Runway Gen-4方式)
①狙い:2人の登場人物が交互に話す短いダイアログシーンで、カットが切り替わっても顔と衣装が別人にならないようにする。Runway Gen-4は参照画像に振ったラベル(image_1、image_2)をプロンプト内で名指しできるのが特徴です。
reference: image_1 = woman, late 20s, short black bob, navy trench coat, neutral studio background
reference: image_2 = man, early 30s, buzz cut, charcoal wool sweater, neutral studio background
prompt: image_1 sits across a small cafe table from image_2. image_1 speaks first, leaning slightly forward, hands wrapped around a ceramic mug. Cut to image_2 replying with a small nod. Keep the coat and sweater exactly as in the reference images across both shots. Warm afternoon window light from camera left, shallow depth of field, 35mm lens look. No text overlays.
③解説:reference: image_1 = …で先に人物の特徴を固定してから、本文中で「image_1」「image_2」と名指しすることで、モデルがどの参照をどのショットに適用すべきか迷わなくなります。さらに「Keep the coat and sweater exactly as in the reference images」と明示することで、衣装のディテールを言い換えではなく“参照への忠実さ”として指示しています。ラベル方式はRunwayの公式ガイドでも推奨されている書き方です。
作例② 画像から動画化してもアングルでキャラが崩れない(Kling Elements方式)
①狙い:1枚の立ち絵から、カメラが正面→横→背後へと回り込む動画を作っても、髪型・服の柄が同一人物のまま保たれるようにする。Kling Element Libraryは顔・衣装・背景を別々の「Element」としてバインドできます。
element[character] = uploaded reference: young woman, curly auburn hair, yellow raincoat with brass buttons, holding a striped umbrella
element[scene] = uploaded reference: rain-soaked city street at night, neon signage reflections
prompt: element[character] walks down the street from element[scene]. Camera starts on a front three-quarter shot, slowly orbits to a side profile, then settles behind her shoulder as she keeps walking. Do not alter the raincoat color, button details, or umbrella pattern at any camera angle. Rain continues falling throughout, footsteps splash softly in puddles.
③解説:Kling方式の要は、キャラと背景を別々のElementとして分離登録する点です。1つの参照に全部を詰め込むと、カメラが動いた瞬間に背景側の情報がキャラの見た目に「侵食」しやすくなります。「Do not alter the raincoat color, button details, or umbrella pattern」のように変えてほしくない属性を名指しで列挙すると、Element参照があってもテキスト側の指示が効きやすくなります。
作例③ シリーズものの色調・雰囲気を継承する「スタイル参照」(Seedance方式)
①狙い:同じ企画のショート動画を何本も作る際、キャラは毎回違っても「作品としての空気感」だけは統一したい。Seedance 2.0のReference-to-Videoは、被写体参照とスタイル参照を分けて渡せるのがポイントです。
style_reference = uploaded reference: muted teal-and-amber color grade, soft film grain, slight vignette, handheld micro-shake
subject_reference = uploaded reference: elderly street vendor, grey wool cap, weathered hands
prompt: subject_reference sets up a small fruit stand at dawn. Apply the color grade, grain, and handheld camera feel from style_reference throughout the shot. Camera holds a static medium shot for the first 3 seconds, then a gentle handheld push-in for the remaining 3 seconds. Ambient market sounds, no dialogue.
③解説:被写体参照とスタイル参照を分離しているのは、「誰が写っているか」と「どう撮れているように見えるか」を別の変数として制御するためです。シリーズの第2話・第3話を作るときはsubject_referenceだけ差し替えてstyle_referenceを使い回せば、キャラが変わっても番組としてのトーンは崩れません。Seedance 2.0の実践ガイドでも、参照は「雰囲気を全部お任せする」のではなく同一性を守るための道具として使うべきだと解説されています。
作例④ 同じ画をもう一度呼び出す「シード値」固定(Veo 3.1方式)
①狙い:気に入ったテイクが出たあと、微妙な瑕疵(手ブレしすぎ、口の動きが不自然など)だけ直したい。あるいは逆に、同じ構図のまま少しだけ違うバリエーションを試したい。Veo 3.1はリクエストにseed値を指定でき、同じ値・同じプロンプトなら似た結果が返ってきます。
prompt: A lighthouse keeper climbs a spiral staircase carrying an oil lamp, warm lamp light flickering against cold blue moonlight through narrow windows, camera slowly tilts upward following her ascent, 8 seconds, aspect ratio 16:9
seed: 481920
// 微修正したい場合: 同じseed 481920のまま、プロンプト内の該当語だけ差し替える
// 別テイクが欲しい場合: seedのみ変更し、プロンプトは固定する
③解説:Google公式ドキュメントによれば、seedは0〜4294967295の範囲で指定する任意パラメータで、同じseedと同じ他のパラメータを使うことで決定的な生成に近づけるとされています(完全な決定性を保証するものではない点に注意)。実務では「seedを固定してプロンプトの語だけ変える=微修正」「プロンプトを固定してseedだけ変える=別テイク探し」という2つの使い方を分けて考えると、無駄な再生成を減らせます。
参照方式の早見表
| 目的 | 触るべきパラメータ | 効果 |
|---|---|---|
| 顔・衣装をショット間で固定 | reference image + ラベル指定(image_1等) | カット割りをまたいだ同一人物感 |
| アングルが変わっても崩さない | Element/Asset単位での個別バインド | カメラワークに強い被写体固定 |
| シリーズの色調・質感を統一 | style reference(被写体参照と分離) | キャラが変わっても番組トーンは維持 |
| 気に入ったテイクの微修正 | seed固定 + プロンプト微調整 | 大枠を保ったまま部分修正 |
| 同じ構図で別バリエーション | プロンプト固定 + seed変更 | 効率的なテイク違い探し |
一貫性プロンプトを組むときの3つのコツ
- 参照は「素材が単純」なほど強い。背景がごちゃついた参照画像より、無地背景で被写体だけがはっきり写っている参照の方が、モデルは何を固定すべきか誤解しにくくなります。
- 同時に変える要素を減らす。ポーズ・カメラ距離・照明・表情を一度に全部変えると、参照があってもドリフトが起きやすくなります。1ショットで変える要素は最大でも1〜2個に絞りましょう。
- 「何を変えないか」を名指しする。「consistent character」のような曖昧な指示より、「Keep the yellow raincoat, brass buttons, and umbrella pattern unchanged」のように守ってほしい具体的なディテールを列挙する方が効きます。
主な情報源
- Introducing Runway Gen-4 (Runway公式)
- Kling Element Library User Guide (Kling AI公式)
- Kling VIDEO 3.0 Model Guide (Kling AI公式)
- Sora 2 Prompting Guide (OpenAI公式Cookbook)
- Generate videos with Veo 3.1 in Gemini API (Google公式)
- Guide video generation using asset and style images (Google Cloud公式)
- Seedance 2.0 Reference-to-Video API (fal.ai)
- S2V-01: Subject Reference of Hailuo (MiniMax公式)
サンプルプロンプトは本メディアのオリジナル例です。各モデル・サービスは提供元の規約に従ってご利用ください。生成物の権利・商用条件は各規約をご確認ください。情報は公開時点のものです。収集・要約はAI、公開判断は人が行っています。