プロンプトの「型」講座、今回は構図や色ではなく「光」と「レンズ」に絞って掘る。生成AIモデルは写真サイトやカメラ雑誌のテキストとセットで学習しているため、Rembrandt lightingや85mm portrait lensのような専門語彙は、モデルの中に強く結びついた”見た目の記憶”を呼び出すスイッチになる。語彙表と、そのまま試せる自作サンプルプロンプトで手を動かしながら覚えていく。

なぜ「光」と「レンズ」の語彙がここまで効くのか
text-to-imageモデルの学習データには、ストックフォトサイトやカメラ愛好家のブログ、写真フォーラムの投稿が大量に含まれている。そこでは”bokeh”や”golden hour”、”85mm portrait lens”のような語が、常に似た見た目の画像とセットで使われてきた。つまりこれらの語は単なる飾りではなく、モデルの中で特定の視覚パターンに強く紐づいた”呼び出しキー”になっている。Promptdexterの解説が指摘する通り、「女性が笑っている」だけでは光もレンズも雰囲気もモデルが推測するしかないが、そこに写真の語彙を足すだけで、モデルは”何百回も同じタグで見てきた見た目”を思い出せるようになる。
Morphicのライティング解説も同様に、光の方向・硬さ・色・強さを言語化することが、画像の雰囲気を決める最も強力な要素の一つだと述べている。
光を指定する語彙——8つの型
まずは覚えておくと汎用性が高いライティング語彙を、効果と向いている用途とともに整理した。
| 用語 | 効果 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| Rembrandt lighting | 影側の頬に逆三角形のハイライトができる、立体感のある人物照明 | 人物ポートレート |
| Chiaroscuro | 強いコントラストと深い影による劇的な明暗表現 | ドラマチックな人物・シーン |
| Golden hour backlighting | 暖色で斜めから差し込む逆光、長く伸びる影 | 屋外・ノスタルジックな情景 |
| Three-point softbox setup | 均一で柔らかいプロ品質の照明 | 商品・スタジオ撮影 |
| Neon lighting / colored rim light | カラフルな人工光が縁取る都市的な雰囲気 | サイバーパンク・夜景 |
| Candlelit | 暖かく揺れる、親密で低照度な光 | 静物・室内シーン |
| Overcast diffused light | 影のない均一で柔らかい光 | ナチュラル・フラットな質感の写真 |
| Low key | 暗部が支配的で、選択的な部分だけを照らす | ミステリアス・シネマティックな場面 |
出典:Morphic AI Glossary: Lighting、Five photographic lighting prompts、Complete Lighting Prompt Guide for Portrait Photography
①狙い:陶芸家の落ち着いた人物ポートレートを、Rembrandt lightingで立体的に見せる。
A close-up portrait of an elderly ceramicist with silver hair pulled back, seated at a pottery wheel in a sunlit workshop. Single key light from upper-left at a 45-degree angle creates a small triangle of light on the shadow-side cheek, Rembrandt lighting, soft falloff into the background, warm terracotta tones, shallow depth of field, 85mm portrait lens, photorealistic --ar 4:5
③分解:「Rembrandt lighting」だけでは方向が曖昧になりがちなので、「upper-left at a 45-degree angle」で光源の位置を明示。「soft falloff into the background」で背景への光の減衰を指定し、被写体だけが立体的に浮き上がるようにしている。
①狙い:洞窟の入り口に立つ旅人を、単一光源のChiaroscuroで劇的に見せる。
A cloaked traveler standing at the mouth of a stone tunnel, holding a single oil lantern. Chiaroscuro lighting: one warm point source from the lantern, everything beyond three meters falls into near-total blackness, hard-edged shadows across the cobblestones, cinematic tension, low key, muted earth tones --ar 16:9
③分解:Queststudioのチートシートが指摘するように、「cinematic lighting」だけを繰り返すと画面がフラットになりやすい。ここでは光源の種類(lantern)、届く距離(beyond three meters)、影の質(hard-edged)まで具体的に書き切ることで、単なる「雰囲気ワード」から実際に効く指示に変えている。
レンズ・カメラの語彙で”焦点”をつくる
光の次に効くのがレンズ・カメラの語彙だ。焦点距離を変えるだけで、同じ被写体でも遠近感や背景処理が大きく変わる。
| 焦点距離の目安 | 効果 |
|---|---|
| 14mm 超広角 | 誇張された遠近感、広大でエピックなスケール感 |
| 28mm 広角 | 臨場感のあるスナップ・ストリート的な写り |
| 35mm | 自然な広がりを保ったまま環境も写し込める |
| 50mm 標準 | 人の目に近い、誇張のない自然な遠近感 |
| 85mm ポートレート | 背景を大きくぼかし、顔をわずかに圧縮して魅力的に見せる |
| 100mm マクロ | 極端な接写で質感やディテールを強調 |
| 400mm 望遠 | 背景を圧縮し、遠くの被写体を大きく手前に見せる |
出典:Promptdexter: Photography Terms、Prompture: Camera and lens language、Runway: Camera Angles in AI Generation
ここで一つ注意したい落とし穴がある。Hailuo AIの解説によれば、「f/1.8」や「85mm」のような数値をモデルは厳密な物理パラメータとしてではなく、あくまで”雰囲気の目印”として扱う。同様にPromptureの分析も、シャッタースピードやISO、カメラ機種名の指定は出力への影響が小さく、トークンを消費するだけの”装飾”になりやすいと指摘している。数値そのものより「what that specification produces(その設定が生む見た目)」を言葉で描く方が効く、というのが実務上のポイントだ。
①狙い:香水瓶の商品写真を、85mmのシャローフォーカスで高級感のある一枚に。
A minimalist glass perfume bottle on a wet slate surface, a single droplet caught mid-fall beside it. 85mm portrait lens, razor-thin focus on the bottle's label with the background dissolving into smooth bokeh, soft golden hour light raking in from camera-left, subtle lens flare, studio product photography --ar 1:1
③分解:「85mm portrait lens」だけでなく「background dissolving into smooth bokeh」と結果を言葉で補強しているのがポイント。数値パラメータに頼りきらず、生まれる見た目を文章で描写することで、モデルがブレなく同じ方向に解釈しやすくなる。
①狙い:フィヨルドを見下ろす登山者を、超広角で”スケール感”を出して見せる。
A lone hiker standing on a ridge overlooking a fjord at dawn, arms spread wide. 14mm ultra-wide lens, exaggerated perspective stretching the foreground rocks toward the camera while the mountains recede dramatically into the distance, cold blue-hour light, thin mist pooling in the valley, epic scale, wide dynamic range --ar 21:9
③分解:超広角の特徴である「手前が伸びて奥が遠くなる」歪みを”exaggerated perspective stretching…while…recede”という一文で明示的に言語化している。焦点距離の単語だけに任せず、その歪みがどう見えるかまで書くと再現性が上がる。
モデル別の仕上げパラメータ
光とレンズの語彙で”絵の中身”を作ったら、最後はモデルごとのパラメータでフレームを仕上げる。
| モデル | 主なパラメータ | 効果 |
|---|---|---|
| Midjourney | –ar, –stylize, –sw | アスペクト比/芸術性の強さ/スタイル参照の影響度 |
| Imagen(Nano Banana Pro等) | aspectRatio, personGeneration | 出力比率と人物生成許可をAPI/UIから指定 |
| FLUX.2 | aspect ratio, guidance, steps | 出力比率/プロンプト忠実度/品質と速度のバランス |
Midjourneyのアスペクト比は--ar #:#で指定し、公式ドキュメントによれば最終的な解像度はバージョンやアップスケーラーにも依存する。スタイル参照を使う場合は--sw(0〜1000)で影響度を調整できる(Style Reference)。
テンプレートで組み立てる
Google Cloudのプロンプトガイドは、[Subject]→[Action]→[Location/context]→[Composition]→[Style]という括弧書きの構造を推奨している。ここに今回扱った光とレンズを組み込むと、以下のような型になる。
| 順序 | 要素 | 役割 |
|---|---|---|
| 1 | Subject / Action | 誰が何をしているか |
| 2 | Location / context | どこで、どんな空間か |
| 3 | Composition | アングル・ショットサイズ・配置 |
| 4 | Lighting | 光源の種類・方向・硬さ・色温度 |
| 5 | Lens / Camera | 焦点距離・被写界深度・パースの特徴 |
| 6 | Style | 写真調/イラスト調などの最終的な質感 |
①狙い:東京の狭いラーメン屋台で働く職人を、この6要素の型に沿って組み立てる。
A young ramen chef in a compact Tokyo shop, ladling broth into a bowl mid-motion as steam rises. Narrow open kitchen with hanging paper lanterns and a warm wood counter. Medium shot, slightly low angle, bowl placed on the foreground third. Warm tungsten key light from an overhead lantern, soft fill bouncing off the counter, gentle rim light separating the chef from the dark background, low key. 50mm standard lens, natural perspective, shallow depth of field with soft steam. Editorial food photography, warm color grade, photorealistic --ar 4:5
③分解:Subject/Action、Location、Composition、Lighting、Lens、Styleの6要素を順番に一文ずつ積み上げているだけで、複雑に見える一枚も要素分解すれば書ける。Queststudioが言う「lighting lock」のように、光源の種類・方向・柔らかさ・色温度をワンブロックで固定しておくと、同じ設定のまま被写体だけを差し替えるといった量産にも応用しやすい。
よくある失敗
- 「cinematic lighting」だけで済ませる。 前述の通りムードラベルにすぎず、光源の方向や硬さを書かないと画が平坦になりやすい。
- 数値スペックに頼りすぎる。 「f/1.8, ISO 100, 1/200s」のような羅列はトークンを消費するだけで効果が薄い場合が多い。数値ではなく生まれる見た目(ぼけ方・粒状感・ブレ方)を言葉で描く方が安定する。
- 光とレンズを一緒に語らない。 光の方向とレンズの被写界深度は連動して見た目を決めるため、どちらか一方だけを詳しく書いても狙った画にならないことがある。
主な情報源
- Morphic AI Glossary: Lighting
- Five photographic lighting prompts that create distinct effects
- Complete Lighting Prompt Guide for Portrait Photography
- Hailuo AI: Master Depth of Field & Cinematic Bokeh
- Promptdexter: How To Use Photography Terms To Elevate Your AI Images
- Prompture: Camera and lens language
- Runway: How to Use Camera Angles in AI Generation
- Queststudio: AI Image Lighting Prompts Cheatsheet
- Midjourney Docs: Aspect Ratio
- Midjourney Docs: Style Reference
- Google Cloud: Ultimate prompting guide for Nano Banana
- Google AI for Developers: Generate images using Imagen
- Black Forest Labs: Prompting Guide – FLUX.2
サンプルプロンプトは本メディアのオリジナル例です。各モデル・サービスは提供元の規約に従ってご利用ください。生成物の権利・商用条件は各規約をご確認ください。情報は公開時点のもの。収集・要約はAI、公開判断は人。