今週はモデル横断のベンチマーク動向、API価格競争、大型資金調達、そして米イリノイ州とEUの新しいAI規制という4つの切り口で、Claude/Anthropic以外の業界動向をまとめる。フロンティアモデルの性能差は縮まる一方、価格と規制という「非モデル要因」が競争構造を左右し始めている。

最新ベンチマークで見る三強比較:GPT-5.6・Gemini 3.1 Pro・Grok 4.5
7月に入り、OpenAIのGPT-5.6(Sol/Terra/Lunaの3段階ティア)が7月9日から一般提供を開始し、Grokもコーディング特化のGrok 4.5(7月8日リリース)に切り替わった。Gemini 3.1 Proを含めた三強を比較アグリゲーターのLM CouncilやLLM Statsのデータで見ると、得意分野がはっきり分かれている。
| 指標 | 首位モデル | スコア/特徴 |
|---|---|---|
| コーディング(SWE-bench系) | Grok 4系 | 約75%、GPT-5系が僅差で追随 |
| 科学的推論(GPQA Diamond) | Gemini系 | 約94.3%でトップ |
| リアルタイム性 | Grok | X(旧Twitter)連携による最新情報の取り込みが強み |
| コスト効率 | Grok 4.5 | Artificial Analysis指数で見た体感コストが業界平均の1/5程度という試算 |
単一の「最強モデル」は存在せず、コーディングはGrok系、科学推論はGemini系が強いという住み分けが続いている。用途に応じたモデル選定が実務では引き続き重要になりそうだ。
API価格競争:トークン単価はさらに下落
性能差が縮まる一方で、価格競争は激化している。集計サイトCostGoatなどによれば、2026年6月時点の出力トークン単価は最安のDeepSeek V4 Flashで100万トークンあたり0.28ドル、フラッグシップ級のGPT-5.5系で最大30ドルと、100倍以上の価格差が生じている。
- 2023年3月比でフロンティアLLMの平均出力価格は約94.5%下落したとの試算
- 2025年初頭から2026年初頭の1年間だけでも約80%下落したとの分析もある
- Googleは低価格帯(Gemini Flash系)で攻勢を強め、xAIもGrokの廉価版で追随
推論性能の向上と価格下落が同時に進んでおり、開発者にとってはモデル選定基準が「性能」から「性能あたりコスト」へシフトしつつある。

資金調達:Together AIが800億円規模のSeries Cを調達
オープンソースモデルの推論インフラを提供するTogether AIが、Aramco Venturesを主導投資家として8億ドル(評価額83億ドル)のSeries Cを7月1日に発表した。NvidiaやVista Equity Partners、General Catalystなども参加している。
- 年間ブッキングは直近四半期で11.5億ドルを突破
- 500MW超のコンピュート容量確保にも合意し、今後5年でインフラ規模を約50倍に拡大する計画
- 「クローズドモデル一強」ではなく、オープンウェイトモデルを使った推論需要の拡大を映す動き
Crunchbaseによれば2026年上半期の世界スタートアップ投資額は過去最高の5100億ドルに達しており、AI関連が牽引役となっている。
出典: Together AI公式ブログ
規制動向(1):米イリノイ州が「破局的リスク」規制の新法に署名
イリノイ州のプリツカー知事は7月、大規模AI開発企業を対象とするAI Safety Measures Act(SB315)に署名した。カリフォルニア州・ニューヨーク州に続く州レベル規制で、全米でも最も包括的な内容とされる。
- フロンティアモデル開発者に「破局的リスク」(50人以上の死傷または100万ドル超の損害につながり得るリスク)の評価枠組みを毎年公表・更新するよう義務付け
- 重大インシデントは発生から72時間以内(切迫した危険がある場合は24時間以内)に報告する義務
- 独立した第三者による年次監査を義務化
連邦レベルの統一規制が停滞する中、州が独自に規制の枠組みを主導する構図が続いている。
規制動向(2):EUがAI法「高リスク」規制の適用を延期
EU理事会は6月29日、AI法(AI Act)の運用を簡素化する「オムニバスVII」パッケージに最終承認を与えた。欧州議会も6月16日に承認済みで、まもなく官報掲載を経て発効する見通し。
| 対象 | 新しい適用開始日 |
|---|---|
| スタンドアロン型の高リスクAIシステム(採用選考・与信審査・法執行・教育・国境管理など) | 2027年12月2日 |
| 規制対象製品に組み込まれた高リスクAIシステム | 2028年8月2日 |
あわせて中堅企業向けの適用除外や、AIリテラシー要件を「確保する」から「支援する」へ緩和するなど、事業者側の負担軽減も盛り込まれた。一方でEUデータベースへの登録義務は、高リスク非該当と考える事業者にも課されるなど透明性確保の要素も残る。
主な情報源
- LM Council Benchmarks
- CostGoat LLM API Pricing Comparison
- Together AI公式ブログ
- Crunchbase News
- Capitol News Illinois
- 欧州理事会(Council of the EU)
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