2026年6月、GoogleはAI分野で矢継ぎ早にアップデートを打ち出した。テキスト拡散モデル「DiffusionGemma」のオープンソース公開、NotebookLMのエージェント機能強化、企業向けVertex AI後継プラットフォームの発表、そして中小企業向けGemini新機能の追加と、Google DeepMindおよびGoogle Cloudの動きが活発化している。本記事ではその主要トピックをまとめる。

1. DiffusionGemma 26B:拡散型LLMで従来比最大4倍の推論速度を実現
Google DeepMindは2026年6月10日、テキスト生成に拡散(Diffusion)技術を採用したオープンウェイトモデル「DiffusionGemma 26B-A4B」をApache 2.0ライセンスで公開した。画像生成AIで一般化している「拡散」プロセスをテキスト生成に応用した実験的モデルで、Google DeepMindにとって初のオープンウェイトテキスト拡散モデルとなる。
仕組みと速度の優位性
従来の自己回帰型LLMが「トークンを1つずつ生成」するのに対し、DiffusionGemmaは256トークンのブロック単位で並列デノイジングを行う。これにより、NVIDIA H100(FP8)で1,100トークン/秒超、RTX 5090でも700トークン/秒超という高速推論を達成。同等サイズのGemma 4 26B比で約4倍の速度向上が確認されている。

スペック概要
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 総パラメータ数 | 25.2B(MoE) |
| アクティブパラメータ数 | 3.8B |
| コンテキスト長 | 256Kトークン |
| VRAM要件(BF16) | 最小18GB |
| 対応言語 | 35言語以上 |
| マルチモーダル入力 | テキスト・画像・動画 |
| ライセンス | Apache 2.0 |
| 推論速度(H100 FP8) | 1,100トークン/秒超 |
ベンチマークではMMLP Pro 77.6%、GPQA Diamond 73.2%、MATH-Vision 70.5%を達成。ただしGoogleも公式に認める通り、同サイズのGemma 4より精度はやや低い。ネイティブ関数呼び出し(Function Calling)とリーズニングモードも備え、エージェントワークフローや長文処理への活用が想定されている。Unslothではローカル実行・ファインチューニングガイドも公開されており、NVIDIA NIM経由での利用も可能だ。
出典: The New Stack — Google’s DiffusionGemma is 4x faster than its other Gemma models
2. NotebookLM がGemini 3.5で「エージェント型研究ツール」に進化
Googleの研究支援ツールNotebookLMが、Gemini 3.5と「Antigravity」技術を基盤とした大型アップデートを受けた(2026年6月)。これまでアップロードしたドキュメントの要約・Q&Aが主な機能だったが、今回の更新でほぼ別サービスと言えるほど機能が拡張された。
主な新機能
- ノートブックごとの専用クラウドコンピュータ:各ノートブックにサンドボックス型クラウド環境が割り当てられ、コードを実行してデータ分析が可能に
- 100以上のソフトウェアスキル:データクリーニング、統計処理、グラフ生成など、ビルトインスキルが大幅追加
- チャット型ソース発見:空のノートブックに研究テーマを入力すると、Google検索経由で質の高い一次資料・参照文献を自動提案
- 多様な出力形式への対応:PPTX・XLSX・DOCX・PDF・CSV・SVGなど12形式以上へのエクスポートが可能に
- 思考プロセスの可視化:AIが情報を統合する際の推論ステップを確認できるようになった
Googleの内部ベンチマークでは、大規模文書分析で約70%、ウェブリサーチ・ソース発見で78%以上の勝率を報告。ただし現在はGoogle AI Ultra・Workspace AI Ultraユーザー限定の提供となっている。
出典: Chrome Unboxed — NotebookLM gets a massive upgrade powered by Gemini 3.5
3. Vertex AI を刷新——「Gemini Enterprise Agent Platform」でエンタープライズAIエージェントの統合基盤へ
Google Cloudは2026年のCloud Nextおよびその後のI/O 2026で、Gemini Enterprise Agent Platformの詳細を発表した。これまでのVertex AIのすべての機能と今後のロードマップは、このプラットフォームを通じて提供される形に統合・移行される。
プラットフォームの4本柱
- Build(構築):ADK(Agent Development Kit)2.0、Gemini Enterprise Appでのエージェント開発
- Scale(スケール):Agent Runtimeのスケールアップとメモリ管理の強化
- Govern(ガバナンス):Agent Identity(エージェントごとの暗号化IDの付与)、Agent Registry、Agent Gateway による可視化・制御
- Optimize(最適化):Agent Simulation、Agent Evaluation、Agent Observabilityによる品質管理
なかでも「Agent Identity」は注目機能で、AIエージェントごとに固有の暗号化アイデンティティを付与することで、企業内でどのエージェントが何にアクセスしているかを厳密に管理できる。Redditのgooglecloudコミュニティでも「モデルのデプロイ基盤から、自律的エージェントの運用基盤への転換」という評価が多く見られた。
また、同プラットフォーム発表に合わせ、GoogleはAppleとの提携でGeminiがSiriを駆動することも明らかにしており(Cloud Next ’26)、AndroidとiOS双方でGeminiが主要スマートフォンの基盤モデルとなる可能性が生じている。
出典: RedMonk — Google Cloud Next 2026: The Agent Era and the Full AI Stack
4. Geminiが中小企業ツールに進化——Google Business Profile連携と「Business Notebooks」
Googleは2026年6月10日、中小企業向けGemini新機能を発表した。ブラジルでのイベントと合わせて公開されたこの機能は、Google Business Profileとの直接連携が柱だ。
- Google Business Profile(GBP)連携:ワンタップでGeminiアプリにGBPを接続し、口コミへの返信案作成・投稿内容の提案・営業時間の確認などをAIがサポート
- Business Notebooks:自社のブランド情報・商品ラインナップ・FAQ等をもとに、各ビジネスに特化した知識ベース付きのAIノートブックを自動生成
両機能はEEA(欧州経済領域)・英国を除くグローバル向けに今月より順次展開予定。合わせてWorkspaceとGeminiの特別オファーも近日公開予定とされており、中小企業のAI活用の入り口として位置づけられている。
出典: Search Engine Roundtable — Gemini Can Help With Your Google Business Profiles
主な情報源
- The New Stack — Google’s DiffusionGemma is 4x faster than its other Gemma models
- Hugging Face — google/diffusiongemma-26B-A4B-it(モデルカード)
- NVIDIA NIM — DiffusionGemma 26B A4B IT
- Chrome Unboxed — NotebookLM gets a massive upgrade powered by Gemini 3.5
- MindStudio — NotebookLM Upgraded to Gemini 3.5: New Skills, Code Execution, and Output Formats
- Google Cloud Blog — What Google Cloud announced in AI this month
- RedMonk — Google Cloud Next 2026: The Agent Era and the Full AI Stack
- Google The Keyword — Save time and grow your business with new Gemini tools
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