ドリー・パン・トラッキングを使い分ける――AI動画生成のカメラワークと尺・アスペクト比プロンプト講座

動画生成プロンプト のアイキャッチ

AI動画生成のプロンプトで「何をどう動かすか」を決めるカメラワークは、被写体の演技やライティングと並ぶ最重要パラメータのひとつだ。前回はスロー・タイムラプス・スピードランプといった「速度」の演出を扱ったが、今回は「カメラそのものがどう動くか」――パン・チルト・ドリー・トラッキング・クレーン・ペデスタルの基本6動作と、尺(秒数)・アスペクト比の指定方法を、Veo・Kling・Runway・Seedanceの作例プロンプトとともに整理する。

AI動画生成のカメラワークと尺・アスペクト比の指定を表すイラスト

カメラの基本6動作をおさらいする

多くの動画生成モデルのプロンプトガイドは、実写映画のカメラワーク用語をそのまま踏襲している。Google CloudのVeo 3.1プロンプトガイドやRunwayのGen-4プロンプトガイドが共通して挙げる基本の動きは次の6種類だ。

動作 カメラの動き 使いどころ
パン(Pan) 三脚を軸に水平方向へ首振り 広い空間を左右に見せたいとき
チルト(Tilt) 三脚を軸に垂直方向へ首振り 高さの強調、見上げ・見下ろし
ズーム(Zoom) レンズ焦点距離を変えて画角を変化 被写体を強調しつつ背景の圧縮感を出す
ドリー/トラッキング(Dolly/Track) カメラ本体が前後・左右に物理移動 被写体への接近・並走、没入感の演出
ロール(Roll) レンズ軸を中心に画面を回転 混乱・浮遊感などの心理的効果
ペデスタル(Pedestal) カメラ全体を垂直に上下移動 目線の高さを変えず視点だけ上下させる

特に重要なのが「一度に1つの動きだけを指定する」という原則だ。Google CloudのVeo 3.1ガイドは、パン・チルト・オービット・ズーム・ハンドヘルドを1つの短いクリップに詰め込むと出力が混乱すると警告しており、Klingの公式カメラコントロールガイドも同様に、明確な動きの優先順位を1カット1動作で与えることを推奨している。「ゆっくり前進してからパンする」のような複合指示は、モデルがどちらも中途半端にしか実行できない典型的な失敗パターンだ。

作例1:ドリーインで没入感を作る(Veo)

①狙い:薄暗い厨房でシェフが皿を仕上げる手元に、静かにカメラが寄っていく緊張感のあるカット。

Cinematic dolly-in, slow push toward a chef's hands plating a dessert in a dim, candlelit kitchen. Shallow depth of field, warm tungsten light, steam rising softly in the background. Camera moves smoothly forward at a low angle, subject stays centered throughout the shot. Photorealistic, 35mm lens look, soft film grain. Ambient kitchen sounds only, no dialogue.

③分解解説:冒頭で”dolly-in”と動作を一語で明示し、”slow”で速度を固定することで複合動作の混乱を防いでいる。”low angle”と”centered”はカメラの姿勢と被写体の位置関係を固定し、移動中に構図が崩れるのを防ぐ役割。”shallow depth of field”はドリーインの寄りで背景がボケていく効果と相性がよく、没入感を強める。

作例2:トラッキングで並走する躍動感(Kling)

①狙い:夕暮れの路地をスケートボードで駆け抜ける人物を、一定距離を保ちながら横並びで追うドキュメンタリー的なカット。

Tracking shot, camera glides alongside a skateboarder riding through a sunset-lit alley, maintaining consistent distance at hip height. Warm golden-hour light, long shadows stretching across the pavement, slight motion blur on the wheels. Single camera movement only: lateral tracking, no zoom or pan. Handheld documentary texture, natural color grading.

③分解解説:”maintaining consistent distance”は被写体とカメラの相対速度を揃える指定で、これが抜けると被写体だけが加速して画面外に消える失敗が起きやすい。”single camera movement only”は前述の1カット1動作の原則を明示的に念押しする一文で、Klingのモーションコントロールガイドが推奨する書き方に沿っている。

作例3:クレーンショットで世界観を開く(Runway)

①狙い:夜市の屋台にある提灯のアップから、赤い提灯と湯気で満ちた路地全体を見せるスケール感のある1カット。

Slow crane shot rising from a close-up of a single lantern in a night market stall, revealing the full crowded alley below filled with red lanterns and steam from food stalls. Camera moves smoothly upward and slightly backward in one continuous motion, no cuts. Warm amber and red color palette, cinematic wide-angle lens, atmospheric haze diffusing the light.

③分解解説:”rising”と”upward and slightly backward”でクレーンの軌道を具体的に示し、”in one continuous motion, no cuts”で単一ショット内の連続動作であることを強調している。RunwayのGen-4プロンプトガイドは、あいさつや説明文のような会話的な言い回しはプロンプト枠の無駄になると指摘しており、この例のように視覚情報だけで構成するのが定石だ。

作例4:あえてカメラを固定する(Seedance)

①狙い:習字の一筆に集中させたいマクロ的なカットで、カメラは動かさず被写体の動きだけで見せる。

A calligrapher writes a single kanji character on rice paper, seen from directly overhead. Camera holds a fixed framing with no camera movement. Subject motion: the brush moves slowly and deliberately, ink bleeding softly into the paper fibers. Minimalist studio lighting, high contrast between black ink and white paper, macro lens detail.

③分解解説:BytePlus ModelArkのSeedanceプロンプトガイドは、カメラの動きと被写体の動きを分けて記述することを推奨しており、この例でも”Camera holds a fixed framing”と”Subject motion:”を別の文に分離した。カメラを動かさない選択も立派な「カメラワーク」であり、被写体の繊細な動きを際立たせたいときに有効な手法だ。

尺とアスペクト比はプロンプトより設定で決める

各ツールの公式ガイドが繰り返し注意しているのが、尺(秒数)とアスペクト比は文章で頼むより生成前の設定項目で指定した方が確実だという点だ。OpenAIのSora 2プロンプトガイドも、解像度・尺・キャラクター参照はAPI呼び出し側で明示すべきで、文章内の指示では変化しないと明言している。プロンプト本文にはカメラの意図と被写体の演技を書き、尺とアスペクト比はUIやAPIパラメータで固定するのが基本の役割分担だ。

ツール アスペクト比の選択肢 尺の目安 出典
Veo 3.1 16:9 / 9:16 数秒〜8秒程度のクリップ単位 Google Cloud公式ガイド
Sora 2 横長・縦長・正方形 4秒/8秒/12秒などクリップ単位、最大1080p OpenAI公式ガイド
Runway Gen-4 16:9 / 9:16 / 1:1 / 4:3 / 3:4 / 21:9 5秒または10秒 Runway公式ガイド
Kling(Motion Control) 用途に応じて複数プリセットから選択 ショットごとに秒数を指定可能(マルチショット構成) Kling公式ガイド
Seedance Auto / 21:9 / 16:9 / 4:3 / 1:1 / 3:4 / 9:16 モデル世代により数秒〜15秒程度 BytePlus公式ガイド

まとめ:カメラワークは「1カット1動作」で書く

  • 基本6動作(パン・チルト・ズーム・ドリー/トラッキング・ロール・ペデスタル)から、そのカットで伝えたい情報に一致する動きを1つだけ選ぶ。
  • プロンプト末尾にカメラ指示を置き、速度語(slow / smoothly など)で複合動作の混乱を防ぐ。
  • カメラの動きと被写体の動きは別の文に分けて書くと、モデルが意図を取り違えにくい。
  • 尺とアスペクト比は文章より生成設定側で決めるのが各社ガイド共通の推奨。

主な情報源

サンプルプロンプトは本メディアのオリジナル例です。各モデル・サービスは提供元の規約に従ってご利用ください。生成物の権利・商用条件は各規約をご確認ください。情報は公開時点のもの。収集・要約はAI、公開判断は人。