会議メモを「AIの記憶」に変える——ノートAI Granolaが企業価値1500億円に成長した理由

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会議のたびに「メモを取るか、話に集中するか」で悩んだ経験は多いはずだ。AIノートテイカー「Granola」は、この二択を解消する発想で急成長し、創業3年で企業価値1500億円(10億ドル)規模のユニコーンになった。ビデオ会議に“ボット”を参加させず、パソコン内部で音声だけを拾って自分のラフメモをAIが整形する――そのシンプルな仕組みと、直近の資金調達・機能拡張の内容を紹介する。

AIが会議メモを整理するイメージ

Granolaとは何か——「ボットレス」という選択

Granolaは2023年創業(英ロンドン発)のAIメモアプリで、ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teams、Slack Huddles、さらに対面の打ち合わせにも対応する。多くのAI議事録サービスが「会議に参加者としてボットを入室させて録音する」方式を取るのに対し、Granolaは利用者のPC上で動くアプリがシステム音声とマイクを直接キャプチャする。参加者側には見慣れない参加者アイコンが増えないため、社外との商談や採用面接など「ボットが映るのは気まずい」場面でも導入しやすいのが特徴だ。

もう一つの特徴は、書記をAIに完全委任しないという設計思想だ。会議中はユーザー自身が思いついたことを断片的にメモ(スクラッチパッド)に打ち込み、会議終了後にAIがその断片を文字起こし全文と組み合わせて、構造化された議事録に仕上げる。全自動の要約ツールと比べ、「自分が重要だと感じた論点」がAIの解釈より優先されやすい点が、レビュー各社でも評価されている。

資金調達で企業価値1500億円——単なるメモアプリから「AIの記憶」基盤へ

2026年3月25日、GranolaはIndex Ventures主導のシリーズCで1億2500万ドル(約190億円)を調達し、企業価値は15億ドル(約1500億円)に達したと発表した。前回ラウンドの2.5億ドルから6倍に跳ね上がった評価額で、Kleiner Perkinsも新規に参加、既存投資家のLightspeed Venture PartnersやSpark Capitalも継続出資している。創業者のChris Pedregal氏とSam Stephenson氏によれば、年初来で収益は2.5倍に成長したという。

同時に発表された新機能が「Spaces」だ。チーム単位のワークスペースを作り、その中にフォルダを設け、誰がどの範囲にアクセスできるかを細かく制御できる。個人の議事録アプリから、組織全体の会議データを蓄積・検索する「ナレッジ基盤」への転換を狙っている。単体のメモ機能では価格を上げにくいが、蓄積された会議データをAIエージェントに接続する「文脈レイヤー」としてなら高単価を狙える、というのが業界の見立てだ。

料金プラン

プラン 価格 会議履歴 連携・API その他
Free 無料 直近30日間 連携なし(MCPのみ一部利用可) AI整形・文字起こしは無制限
Business 14ドル/人/月 無制限 Slack・Notion・HubSpot・Affinity・Attio・Zapier(8000以上のアプリ)・MCP 管理者向け設定
Enterprise 35ドル/人/月〜 無制限+保持期間設定 上記全て+API SSO、組織全体でのAI学習オプトアウト既定

ClaudeやChatGPTから会議履歴を呼び出す——MCP対応

GranolaはModel Context Protocol(MCP)に対応しており、ClaudeやChatGPT、Cursorなど対応クライアントから、過去の会議メモや文字起こしを直接検索・参照できる。OAuth 2.0でユーザーごとに接続する仕組みで、Freeプランでも限定的な履歴アクセスが可能、有料プランではフォルダ単位のアクセスや全文字起こしの参照まで広がる。「議事録を別のツールにコピーする」のではなく、「AIエージェントが必要な時に会議の文脈を引き出す」という使い方を前提にした設計だ。

チームでの打ち合わせの様子
Photo: Startup Stock Photos / CC0 1.0(Openverse経由)

プライバシーは要確認——「学習に使わない」契約と、既定値のリスク

GranolaはOpenAIやAnthropicなど連携先のAIベンダーが会議データをモデル学習に使うことを契約上禁止している。一方で、Granola自身が「非識別化したデータ」を自社AIの改善に使う場合があり、これはアカウント設定でオプトアウトできる。Enterpriseプランでは組織全体でオプトアウトが既定値だが、Businessプランではユーザー各人が個別に設定を変更する必要がある。海外のセキュリティレビューでは、メモの共有リンクが既定で外部からアクセス可能な設定になっているケースが指摘されており、機密性の高い商談や人事面談で使う場合は、共有範囲とAI学習設定を最初に確認しておきたい。SOC 2 Type 2、GDPR準拠を掲げ、企業向けにはTrust Centerでの資料開示にも対応している。

競合との違い

AI議事録市場にはFireflies.aiやOtter.ai、Fathom、Krispなど多数の競合がいる。多くは会議に「ボット」を参加させて録音・要約するのに対し、Granolaはボットレスかつ「ユーザーの手書きメモをAIが補完する」という位置づけが際立つ。反面、録音そのものの共有やビデオ・チャット履歴の統合といった機能では、ボット型のツールに劣る場面もある。チームの議事録を営業CRMや自動アクションに直結させたい場合は、Fireflies系や後発のSpinachのような、構造化出力に強いツールと比較検討する価値がある。

まとめ

Granolaは「AIに全部書かせる」のではなく「人のメモをAIが仕上げる」という中間的な設計で支持を広げ、単なる議事録アプリから会議データを核にしたAIエージェント基盤へと進化しようとしている。個人利用ならFreeプランで十分試せるが、チームで使うなら連携先の権限設定とプライバシー既定値を必ず確認してから導入したい。


主な情報源

各ツールは提供元の規約に従ってご利用ください。情報は各情報源の公開時点のものです。収集・要約はAI、公開判断は人。