「何を映すか」だけでなく「カメラがどう動くか」を言葉にできると、AI動画生成の仕上がりは一段階プロっぽくなります。今日はSora・Veo・Kling・Runway・Hailuo/Seedanceの公式ガイドが共通して重視する「ドリー」「パン」「トラッキング」「クレーン」「オービット」といった映画的カメラ語彙を、自作のサンプルプロンプト5本で解説します。

カメラワードを使うと何が変わるのか
各ツールの公式ガイドに共通するのは「1ショットにつきカメラの動きは1つだけ」という原則です。OpenAIのSora 2 Prompting Guideは、プロンプトを絵コンテのように書き、カメラの角度と動きを冒頭で明示することを勧めています。Kling公式ブログのカメラコントロールガイドも「push・pull・pan・tiltを組み合わせすぎると破綻する」と指摘しており、動きを足し算するより、時間の流れの中で1つの動きに絞るほうが安定します。以下の5作例では、狙い→プロンプト→なぜ効くかの順で分解します。
作例1:スローなプッシュインで感情の変化を見せる(Sora向け)
狙い: 静かな室内で、人物の表情がふと曇る瞬間を、ゆっくりとしたプッシュイン(ドリーイン)で見せる。
Interior, dim evening light through a window. A woman sits alone at a kitchen table, both hands wrapped around a warm mug. Slow dolly-in toward her face over the shot, eye-level, shallow depth of field, 35mm lens. Her expression shifts from calm to quiet worry as she notices something off-frame. Warm practical lighting, soft film grain, cinematic color grade.
効いている要素: 冒頭で場面を短く提示したあと、”slow dolly-in toward her face” と1つの動きだけを明言しているのがポイントです。Sora 2 Prompting Guideが薦める「One Shot, One Thing(1ショットにつき1つの動きと1つのアクション)」の型に沿っています。”eye-level”で視点の高さを固定し、”shallow depth of field, 35mm lens”でレンズ情報まで指定することで、背景がボケて表情に視線が集まる画になります。感情の変化(calm→worry)を時間軸で書くことで、カメラの動きと表情変化を同期させています。
作例2:並走トラッキングで疾走感を出す(Veo向け)
狙い: 自転車で走る人物の横に、カメラがぴったり並走しているような臨場感を出す。
A cyclist rides through a quiet tree-lined street at golden hour, dappled sunlight flickering through the leaves.
Tracking shot moving alongside the cyclist at shoulder height, holding a steady lateral position that matches their speed exactly. Wide-angle lens, warm color grade, gentle motion blur on the background trees. The camera does not lead or lag behind the subject — it stays locked to their pace throughout.
効いている要素: Google CloudのVeo 3.1公式プロンプトガイドは「カメラの動きは “The camera pulls back” のように独立した文で書くと解釈精度が上がる」としています。この作例でも被写体の描写とカメラ指示を段落で分け、”The camera does not lead or lag” と相対速度まで明記しました。Veoは “tracking shot” や “dolly zoom” のような専門用語の解釈精度が高いとガイドが述べており、あいまいな比喩より映画用語で書くほうが安定します。
作例3:クレーンでスケール感を一気に見せる(Kling向け)
狙い: 崖の上に立つ登山者から、一続きの動きで山脈全体の絶景へと視点を切り替える。
A hiker stands at a cliff edge at dawn, cool morning light, mist drifting in the valley below.
Camera slowly rises and pulls back in one continuous crane movement, revealing the full mountain range and valley. Steady, gradual speed throughout — no sudden acceleration. Epic, awe-inspiring mood, soft volumetric light through the mist.
効いている要素: Kling公式のカメラコントロールガイドは「push・pull・pan・tiltなど複数のカメラ指示を混ぜるほど破綻しやすく、支配的な動きを1つ選ぶ」ことを推奨しています。上昇と後退という2つの要素を”one continuous crane movement”とまとめて1つの動きとして提示し、”steady, gradual speed”で速度まで指定することで、手動のカメラスライダーに近い制御を文章だけで再現しています。
作例4:オービットでプロダクトの質感を魅せる(Runway向け)
狙い: 香水瓶の周りをカメラが弧を描いて回り込み、高級感のある商品ショットに仕上げる。
Orbit shot circling slowly around a glass perfume bottle on a dark reflective surface. Studio lighting with a soft rim light, macro lens, shallow depth of field. Camera completes a smooth 180-degree arc from left to right at constant speed. Minimal, elegant, high-end product photography style.
効いている要素: RunwayのGen-4 Video Prompting Guideは、カメラの動きの核心部分は5〜10語程度で簡潔に書き、形容詞を足しすぎないほうが安定すると述べています。ここでは”180-degree arc…at constant speed”と角度・速度だけを数値的に指定し、装飾的な言葉を避けました。Runwayには元々Orbit・Dolly・Panのプリセットがあることも踏まえ、プリセット名をそのまま英語プロンプトに使うと意図が伝わりやすくなります。
作例5:ハンドヘルド→ホイップパンで緊迫感を演出(Hailuo/Seedance向け)
狙い: 路地裏で言い争う2人を手持ちカメラで捉え、物音に気づいた瞬間だけ素早いパンで視線を切り替える。
Handheld camera with a subtle shake follows two people arguing in a dim alley, documentary-style framing with slightly loose composition, grainy high-contrast lighting, tense atmosphere.
On the sudden loud noise off-frame, whip pan right in one fast motion to reveal its source.
効いている要素: Hailuo(MiniMax)のカメラプロンプト解説では、”zoom, drone orbit, handheld tracking, whip pan”のように複数の動きを1文に詰め込むと破綻しやすいと指摘されています。この作例ではハンドヘルドとホイップパンを同時に書かず、”On the sudden loud noise off-frame”という時間の区切りを挟んで2段階に分けました。BytePlus ModelArkのSeedanceプロンプトガイドも、長いシーンほど段階(ステージ)に分けて指示することを勧めており、複数のカメラワークを使いたい場合は「同時」ではなく「順番」で書くのがコツです。
カメラ用語ミニ辞典
| 用語(英語) | 動きの内容 | 効果・使いどころ |
|---|---|---|
| Dolly(push-in / pull-back) | カメラ本体が被写体に近づく・離れる | 感情の高まりや緊張の緩和を演出 |
| Pan | カメラが水平方向に首を振る | 視線誘導、広い空間の提示 |
| Tilt | カメラが垂直方向に首を振る | 見上げ・見下ろしでスケール感を提示 |
| Tracking shot | 被写体と並走・追従して動く | 並走感、臨場感の演出 |
| Crane | カメラが上下方向に大きく移動 | 俯瞰への転換、スケールの提示 |
| Orbit | 被写体の周りを円弧状に回り込む | 立体感、プロダクトショット |
| Handheld | 手持ち風の微振動を加える | ドキュメンタリー感、緊張感 |
| Whip pan | 高速で振り向くパン | 場面転換、驚きの演出 |
| Rack focus | フォーカスを手前/奥へ移動 | 注目対象の切り替え |
書くときのコツまとめ
- 1ショット1動き。動詞を積み重ねるより、時間の区切り(「〜した瞬間に」)で段階を分ける。
- カメラ指示は被写体の描写と別の文・別の段落にすると、モデルが解釈しやすい。
- 角度・速度・レンズは数値やプリセット名(例: 180-degree arc, 35mm lens)でできるだけ具体的に。
- 複数モデルで同じ画作りをしたいときも、この共通語彙をベースにすればツール間の移植がしやすい。
主な情報源
- Sora 2 Prompting Guide(OpenAI Developers Cookbook)
- Ultimate prompting guide for Veo 3.1(Google Cloud Blog)
- Kling AI Camera Control Guide(Kling公式ブログ)
- Gen-4 Video Prompting Guide(Runway公式ヘルプ)
- AI Camera Prompts: How to Control Camera Movement, Angles and Shots in AI Video(Runway)
- Dreamina Seedance 2.0 series prompt guide(BytePlus ModelArk Docs)
サンプルプロンプトは本メディアのオリジナル例です。各モデル・サービスは提供元の規約に従ってご利用ください。生成物の権利・商用条件は各規約をご確認ください。情報は公開時点のもの。収集・要約はAI、公開判断は人。