2026年8月中旬の画像・動画・音声生成AI周辺では、規制とビジネス両面で大きな動きが相次ぎました。EUではAI生成コンテンツの表示義務がついに施行され、音楽生成AIのSunoは大手レーベルとのライセンス契約で「訴訟の時代」から一歩踏み出しています。動画側でもHeyGenやRunwayが実務向け機能を拡張する一方、OpenAIのSoraはコンシューマー向けサービスを終了し、APIも終了を控えるなど、各社の方向性の違いが目立つ1週間でした。

EU AI Act第50条、AI生成コンテンツの表示義務が施行
2026年8月2日、EU AI Actの透明性規定である第50条の適用が始まりました。音声・動画・画像・テキストを生成するAIシステムの提供事業者・利用事業者に対し、出力がAI生成であると機械可読な形式で判別できることを保証する義務を課すもので、ディープフェイクについてはより強い開示要件が求められます。商用でAI生成の画像・動画・音声・文章を使う場合、明示的なラベル表示を怠ると最大1500万ユーロの制裁金リスクがあり、対象はチャットボットや合成メディア生成ツール全般に及びます。日本企業がEU向けの広告やコンテンツにAI生成素材を使う際も、表示対応の確認が必要になりそうです。
出典: EU Artificial Intelligence Act – Article 50 Transparency Rules
音楽生成AI――Suno×BMGのライセンス契約と「Studio 2.0」
Sunoは8月12日、大手音楽企業BMGとのライセンス契約を発表しました。BMGが保有する楽曲カタログの利用料をSunoが支払う内容で、過去モデルの学習データとしての利用も対象に含まれます。アーティストや作家がAIの入力・出力への利用をオプトインで選べる仕組みが盛り込まれており、大手レーベルとの契約としては これで2件目です。同時期には、MIDI出力とプラグインビルダーを備えた新エディター「Studio 2.0」もリリースされ、権利処理の正規化と機能拡張を並行して進めています。一方、競合のUdioは8月17日、独立アーティスト側の再考申し立てが裁判所に退けられ、州法上の請求は著作権法に先占されるとの判断が維持されました。

出典: Forbes – AI Music Generator Suno Inks Major Music Label Licensing Deal、AI Music Briefing #15
動画生成AI――HeyGenの「Digital Twins」でセリフ動画の量産が加速
AIアバター動画のHeyGenは8月、利用者自身の分身となる「Digital Twins」を作成し、カメラの前に立たずに175以上の言語でナレーション動画を量産できる機能を公開しました。全身の自然な動きや微細な表情表現を担う同社のAvatar IVモデルを土台に、レンダリングの自動化や速度・品質モードの切り替えといった実務向けの改善も進めています。タレント契約や大掛かりな撮影を避けたい企業のPR動画・研修動画・多言語ローカライズ用途を中心に需要が見込まれます。
出典: WaveSpeed Blog – HeyGen Avatar IV Complete Guide 2026
動画生成AI――Runwayの「Model Router」がAPIをモデル横断で最適化
RunwayはAPIに「Model Router」を追加しました。コスト・レイテンシ・品質のどれを優先するかをあらかじめ設定として保存しておけば、動画・画像・音声いずれの生成でも個別のモデル名を指定せずに最適なモデルへ自動でルーティングできる仕組みです。あわせてエンタープライズプランでは、ワークスペース単位のAPI使用量エクスポートや監査ログといったガバナンス機能も強化されました。新モデルが次々と登場する中、どのモデルを呼び出すかをインフラ側で抽象化できる点は、生成AIを組み込んだ制作パイプラインを運用する側にとって実務上のメリットが大きいでしょう。
出典: Runway AI Release Notes – August 2026
OpenAI Soraのその後――コンシューマー向けは終了済み、APIも9月に幕
各社が動画生成AIを拡張する中、OpenAIの動画生成サービスSoraは別の道を選びました。コンシューマー向けアプリは2026年4月26日に終了しており、OpenAIはリソースをコーディング支援ツールやChatGPT本体の改善に振り分けています。残っていたAPI提供も2026年9月24日に終了する予定で、制作フローにSoraを組み込んでいたチームは代替先の確保が急務です。RunwayやKling、GoogleのVeoなど他社の動画生成モデルが機能拡張を続ける中、市場の重心は着実に移っています。
出典: Tech Xplore – Sora shutdown reveals costly limits of AI video generation
今回の動きを一覧で
| 項目 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| EU AI Act第50条 | AI生成コンテンツの表示義務が施行 | 8月2日 |
| Suno×BMG | 音楽カタログのライセンス契約を発表 | 8月12日 |
| Suno Studio 2.0 | MIDI出力とプラグインビルダーを追加 | 8月中旬 |
| HeyGen Digital Twins | 自分の分身動画で175言語以上に多言語展開 | 8月 |
| Runway Model Router | 動画・画像・音声を横断する自動ルーティングAPI | 8月 |
| Sora API終了予告 | コンシューマー向けは終了済み、APIも終了へ | 9月24日予定 |
主な情報源
- EU Artificial Intelligence Act – Article 50 Transparency Rules
- Forbes – Suno Inks Major Music Label Licensing Deal
- AI Music Briefing #15
- WaveSpeed Blog – HeyGen Avatar IV Complete Guide
- Runway AI Release Notes – August 2026
- Tech Xplore – Sora shutdown reveals costly limits of AI video generation
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